孤独の備忘録

生きるの難しい

ミスター・ノーボディ 感想

ただただ傑作としか言いようがなかった。

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中学時代からの友人からDVDを借りた。

西部劇が大好きな友人である。

自分はそれほど西部劇をわざわざ選んでみるようなことはしない。見た中で今でも覚えがあるのはゲオで借りてみたクリントイーストウッド許されざる者、大学時代に日本の映画館にタランティーノが来るということで劇場に足を運んだジャンゴ繋がれざる者。(確か来場者サービスで受け取ったTシャツがあったはずなんだがあれはどこにしまったか・・)

後は西部劇といっていいのか分からないが以前もブログで取り上げた明日に向かって撃て!くらいなものだった。

 その時は見る時間があるだろうかと渋々受け取ったものである。

DVDの裏面を見ると、1973年制作だ!俺まだ生まれてないじゃん!それにしても古い映画をよこしたなぁと思いつつ、友人に返却する期限が近づき、仕方なしに暖房のよく効かない寒い部屋でDVDを再生した私の予想をいい意味で裏切ってくれた。

 

簡単なあらすじを書くと、

名の知れた早打ちのガンマン(ジャック・ボーレガード)が高齢を理由に引退を考えていた所、一人の男が現れた。

彼は自らをノーボディ(誰でもない)と名乗り、ジャックの最期を見届けたいと言い出す。ノーボディはジャックの引退に相応しい花道を用意すべく、ある考えをジャックに伝えるのだった・・というお話

ノーボディ↓

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あらすじにしてみればなんてことはないが、実に楽しめた作品であった。特筆すべきはテレンス・ヒル演じるノーボディの無邪気さである。

虫をおとりにして、狙ってやってくる魚を叩きつけ気絶させて喜ぶ少年のような笑顔、軽口を叩きながらチリコンカーンを食べる姿。(これがただの豆のはずなのにやけにうまそうに思える)お酒に弱いと見せつつ後ろにぶん投げたジョッキを目にもとまらぬ早業で撃ち抜くガンマンの一面。日本語吹き替えで見たが声優の広川さんの声も絶妙にノーボディにマッチしていた。

 

ジャックだって負けていない、最終的にジャックはノーボディの差し金で150人もの大群であるワイルド・バンチ一味とたった一人で相対することとなる。

ジャックは的確にワイルドバンチ一味の馬の鞍に隠してあるダイナマイトを銃で撃ち抜き、巨大な砂煙とともに撃ち倒していくのである。

この時に4回に渡ってノーボディが呟く「その腕、歴史に残るぜ」がジャックの引退に相応しい舞台であることを視聴者に更に印象付ける。

 

ワイルドバンチを完全に倒さずに場面は移るが、あくまでワイルドバンチを全員殺すのが目的ではなく、150人もの相手を一人で成し遂げたという実績が必要だったのだろうと考える。

幕引きの決闘も、ジャックはノーボディに負けたということを人々に知らしめるために行ったことであって、命の奪い合いをしているわけじゃない。

決闘後はジャックがノーボディに送る手紙をしたためるシーンで彼が無事に隠居生活を始めていることがよくわかる。ガンマンの宿命はその名にあやかろうと日々やってくるならず者との対決であり、ジャックに見事決闘で撃ち勝ったノーボディはこれからジャックの代わりに重い宿命を背負うことになる。とはいえ、ノーボディはこれからも変わらず生きていくのではないか。最後の床屋のシーンで彼がした行動が視聴者を安心させると同時に彼の人柄をよく表した名シーンだと考える。

 

この映画を勧めてくれた友人に感謝しつつ、最後はお気に入りのセリフで占めることとしよう。

「たまんないねぇ・・・ワイルドバンチ150人を相手にしゃかりきやりあうあんたの姿。しかし、こっちは一人。あんただけ。こりゃ間違いなく歴史に残りますよ歴史に」

 

「その歴史を、お前が詠むか。俺の眠っている墓の前で。」

 

BGMは本当に耳に残る、視聴後は必ず口笛を吹きたくなると思う


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